広島地方裁判所 昭和42年(わ)49号 判決 1969年1月28日
本籍および住居
広島市大須賀町一七六番地
会社役員
森寛一
本店所在地
明治三五年一月一五日生
広島市大須賀町一七六番地
有限会社津田商事
右代表者代表取締役
森寛一
右森寛一に対する所得税法違反、法人税法違反、有限会社津田商事に対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官家藤信正出席のうえ審理し、次のとおり判決する。
主文
被告人森寛一を懲役八月および罰金一、二〇〇、〇〇〇円に、
被告会社有限会社津田商事を罰金一、〇〇〇、〇〇円に
それぞれ処する。
被告人森寛一において右罰金を完納することができないときは金五、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。
被告人森寛一に対しこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用はその二分の一ずつを被告人森寛一および被告会社有限会社津田商事の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人森寛一は、広島市大須賀町一七六番地において、昭和三九年一月末日まで貸金業および質屋業を営んでいたもの、被告会社有限会社津田商事(以下「被告会社」という。)は、右同所に本店を設け、貸金業および質屋業を営むもので、同年二月一日から事実上営業を開始し、同月一三日設立登記を了したもので、被告人森は被告会社の設立当初からその代表取締役であるが、
第一、被告人森は、所定の所得税を不正に免れようと企て、
(一) 昭和三八年一月一日から同年一二月三一日までの期間における実際所得金額は別紙(一)のとおり少なくとも一三、五〇一、八七九円であり、これに対する所得税額が五、八五七、二九〇円であつたにもかかわらず、正規の帳簿には取引の一部のみを記帳して簿外預金を設ける等の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和三九年三月一四日所轄広島税務署長に対し、その所得金額が二、一一三、〇〇〇円、所得税額が三七八、六七〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よつて同年度における所得税五、四七八、六二〇円を免れ、もつて詐偽その他不正の行為により所得税を免れ
(二) 昭和三九年一月一日から同年一二月三一日までの期間にかける実際所得金額は別紙(二)1および2のとおり少なくとも六、五六〇、三五六円であり、これに対する所得税額が二、一四六、〇五〇円であつたにもかかわらず、前同様の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四〇年三月一二日所轄広島東税務署長に対し、その所得金額が一、九八一、三二六円、所得税額が二六五、四九〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、よつて同年度における所得税一、八八〇、五六〇円を免れ、もつて詐偽その他不正の行為により所得税を免れ、
第二、被告人森は、被告会社の業務に関し、所定の法人税を不正に免れようと企て、被告会社の昭和三九年二月一日から同年一二月三一日までの事業年度における実際所得金額は別紙(三)の1および2のとおり少なくとも一四、六三〇、一五三円であり、これに対する法人税額が五、四二一、九三〇円であつたにもかかわらず、前同様の方法により所得の一部を秘匿したうえ、昭和四〇年二月二八日所轄広島東税務署長に対し、その所得金額が七三六、五〇三円、法人税額が二四三、〇四〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、よつて同事業年度における法人税五、一七八、八九〇円を免れ、もつて詐偽その他不正の行為により法人税を免れ
たものである。
(証拠)
一、被告人の当公判廷における供述
一、被告人の検察官に対する供述調書三通および大蔵事務官に対する質問顛末書八通
一、証人岩成久雄の当公判廷における供述
一、大蔵事務官岩成久雄作成の脱税額計算書説明資料二通
一、大蔵事務官岩成久雄ほか二名共同作成の貸付金元利金計算書集計表
一、森陽子の検察官に対する供述罰書および大蔵事務官に対する質問顛末書
一、小田美代子の検察官に対する供述調書および大蔵事務官に対する質問顛末書
一、津田茂、川木雅秋、宮内慶典、中島勝利、小林賢造、和田昭芳、日下薫、石橋正、西井晋、沖本英子、中川一郎、谷口豊、新祖寿郎、内藤純行、佐々 勝真および沖田勝已の大蔵事務官に対する各質問顛末書
一、押収してある所得税確定申告書二通(昭和四二年押八七号の一および二)
一、押収してある法人税決定決綴書綴一綴(同押号の三)
一、押収してある貸付台帳一冊(同押号の四)
(確定裁判)
被告人は昭和四一年一一月二日広島地方裁判所において出資の受入預り金及び金利等の取締に関する法律違反の罪により懲役四月(二年間執行猶予)および罰金五〇、〇〇〇円に処せられ、この裁判は同月一七日確定したもので、この事実は被告人の当公判廷における供述および検察事務官湯浅博文作成の前科調書により明らかである。
(法令の適用)
被告人森の判示第一(一)および(二)の各所為は、いずれも所得税法(昭和四〇年法律三三号)付則二条、三五条により旧所得税法(昭和二二年法律二七号)六九条第一項に、判示第二の所為は法人税法(昭和四〇年法律三四号)付則二条、一九条により旧法人税法(昭和二二年法律二八号)四八条一項にそれぞれ該当するところ、これらはいずれも前示確定裁判を経た罪と刑法四五条後段により併合罪であるので、同法五〇条によりまだ裁判を経ない判示各罪につき処断し、情状により所定の懲役刑と罰金刑を併科し、以上は同法四五条前段により併合罪なので、懲役刑については同法四七条本文、一〇条により情状もつとも重いと認める判示第一(一)の罪の刑に法定の加重をし、罰金刑については同法四八条二項により各罪につき定めた罰金額を合算し、その刑期および金額の範囲内において同被告人を懲役八月および罰金一、二〇〇、〇〇〇円に処し、被告会社については、その代表者である被告人森が被告会社の業務に関して判示第二の違反行為をしたものであるから、法人税法(昭和四〇年法律三四号)付則二条、一九条により旧法人税法(昭和二二年法律二八号)五一条一項を適用して、被告会社に旧法人税法四八条一項所定の罰金刑を科し、その所定金額の範囲内において被告会社を罰金一、〇〇〇、〇〇〇円に処し、刑法一八条により被告人森が右罰金を完納することができないときは金五、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置し、同被告人に対し同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用については、刑事訴訟法一八一条一項本文によりその二分の一ずつを被告人森および被告会社に負担させることとする。
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 神垣英郎)
別紙(一)
損益計算書
(自昭和38年1月1日
至昭和38年12月31日)
<省略>
別紙(二)の1
損益計算書
(自昭和39年1月1日
至昭和39年12月31日)
<省略>
(別紙(二)の2に続く)
別紙(二)の2
損益計算書
(自昭和39年1月1日
至昭和39年3月31日)
<省略>
別紙(三)の1
損益計算書
(自昭和39年2月1日
至昭和39年12月31日)
<省略>